記事への転載は要注意!著作権侵害で罰金1,000万円!?
- 公開日:2021.09.13
- 更新日:2024.05.27
- 記事の書き方
記事を執筆するときに、書籍やWebサイト・論文など、他人の著作物を利用したいと思うことがあります。
他人の著作物を利用する行為は「転載」や「引用」などと呼ばれます。
この記事では著作権法をベースに、転載の概要と注意点について解説します。
目次
1.転載とは
「転載」とは「他人の著作物(画像や文章・音楽・動画など)を複製し、本来の公開場所(著作者が最初に公開したサイトや書籍や論文など)とは別の場所に公開する行為」です。
具体例で見てみましょう。
- 具体例1
-
あるウェブサイトで誰かが書いた面白い記事を発見しました。
そこで「この記事は面白いから自分のサイトにそのまま貼り付けよう」と考え、自身のサイトにコピペして掲載します。
できあがったコンテンツに自分の意見や感想などは特に書きません。
- 具体例2
-
ある人のブログでたくさんのキレイな花の写真を見つけました。
そこで気に入った写真をコピペして自分のブログに貼り付けます。
そのブログ記事には写真のみ掲載し、特に自身のコメントは書きません。
このように他人の著作物のみを使って1つのコンテンツを作る行為が転載です。
なお転載の類似語に「引用」があります。
引用も他人の著作物をそのまま使用する行為です。
しかし引用は、転載のように他人の著作物をメイン要素としては使いません。
あくまでサブ的な要素で使用し、メインとなるのは自身の著作物です。
例えば、健康食品に関する記事を書いているとします。
自身の説明を裏付けるために、ある企業が出している食品のデータを掲載することにしました。
しかしそのデータは自分の文章と比べてわずかな量しかなく、その記事でメインになっているのは自分自身の文章です。
このケースは転載ではなく引用です。
原則的に、引用の場合は無許諾で他人の著作物を使用できますが、転載は著作者の許諾が必要だからです。
2.記事に転載するときは著作権に要注意!
他人の著作物を転載すること自体は可能です。
しかし好き勝手に転載するのはNGです。
必ず著作権についての情報を確認し、ルールに沿って転載しなければなりません。
2-1.著作権とは?
「著作権」とは「著作物に関連して著作者に認められた権利」です。
文章であれイラストであれ、著作物をどう扱うかに関しての権利は基本的に著作者にあります。
- 著作者人格権
-
著作者の名誉を守るための仕組み:著作物を公表するかどうかを決める権利や、著作者名を実名と別名のどちらで公表するか決める権利、著作物を勝手に改変されない権利など
- 著作財産権
-
著作者の財産的利益を守るための仕組み:著作物を複製する権利や、上映・上演・演奏する権利、翻訳・翻案・編曲する権利など
それぞれにさまざまな権利が関係していて、著作権法では細かなルールが定められています。
なお著作人格権は第三者に譲渡されませんが、著作財産権は譲渡可能です。
例えばあるエッセイをドラマ化したい場合、著作者はドラマ制作会社に権利の一部を譲渡できます。
権利を譲渡された側は著作権者として、著作物に関する一定の権利を行使可能です。
著作権は著作物が作られたタイミングで発生し、有効期限は原則的に著作者の生存年間および死後70年間です。
2-2.記事に転載するときは必ず著作者の許諾を得よう
“(複製権)著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。”
“(著作物の利用の許諾)著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。(以下略)”
関連記事:「記事の著作権はライターのもの!ただし契約内容の確認は忘れずに」
2-3.転載は引用よりも著作権がシビア
著作権法は転載のみでなく、引用についても適用されます。
引用は転載よりも他人の著作物を使う割合が少ないとはいえ、他人の著作物を使うことに変わりないからです。
しかし引用は転載よりも気軽に行えます。
著作権法第32条に定められた引用である限り、許諾なしで他人の著作物を使用できるからです。
32条1項には次のように規定されています。
“(引用)公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。”
参照:「記事中での引用の書き方を徹底解説!【URLのみはNG?】」
2-4.記事に転載するときは出典を明示する
著作物を転載したい場合は、著作者や著作権者の許諾を得る必要があります。
しかし許諾を受けても注意すべき点があります。
それは「出典の明示」です。
“(出所の明示)次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。(以下略)”
許諾を得たからといって、出典を明示しなければ法律違反です。
- 著者名
- 題名(書籍や雑誌の場合)
- サイト名(Webサイトの場合)
- 雑誌名や書籍名
- 発行年
- ページ数
- サイトリンク
参照:「記事中での引用の書き方を徹底解説!【URLのみはNG?】」
出典の書き方は引用でも転載でも共通です。
ただし、引用ではなく転載であることをより明確に示したいなら「許諾を得た上で転載」と書くとよいでしょう。
3.許諾なしで転載できるケース
3-1.私的に利用する場合
1つ目のケースは「私的に他人の著作物を利用する場合」です。
プライベートで使うなら、著作者の許諾を得なくても問題ありません。
著作権法第30条には以下の規定があります。
“(私的使用のための複製)著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。(以下略)”
この規定では、個人が他人の著作物を複製することが認められています。
具体例で見てみましょう。
複製OKとなる具体例
- テレビで放映される映画やドラマをダビング機器で録画して、それを個人や家族で楽しむ
- 誰かのブログで公開されている文章をワードにコピペして、自分のみで読む
- 公開されている写真をパソコンに保管してアルバムを作り、個人で楽しむ
このように商業目的ではなく、かつ「家族内その他これに準ずる限られた範囲内」で使用することは、私的使用にあたると判断できます。
- 複製NGとなる具体例
-
パン屋にアニメキャラの顔をあしらったパンを作るように依頼します。
パン屋はパンを作りますが、実際にそのパンを使うのは依頼者です。
依頼者は自分や家族でパンを食べるつもりですが、この場合は複製者と使用者が異なるためNGです。
3-2.官公庁の文書
無許諾で転載できる2つ目のケースは「官公庁の文書を使用する場合」です。
著作権法第13条には以下の規定があります。
“(権利の目的とならない著作物)次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一 憲法その他の法令
二 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
四 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの”
“国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。”
なお公文書を転載できる場合も出典の明示は必要です。
3-3.時事問題に関する論説
無許諾で転載できる3つ目のケースは「時事問題に関する論説を使用する場合」です。
著作権法第39条には以下の規定があります。
“(時事問題に関する論説の転載等)新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
2 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される論説は、受信装置を用いて公に伝達することができる。”
“(略)新聞界としては、同条項の適用範囲を下記のように解釈し、これを今後新聞界の慣行として確立することとしたい。
1.「政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説」とは政治上、経済上、社会上の時事問題に関する社説ならびに社説とみなされる論評記事を指す。
2.署名入りの時事に関する評論、解説記事は利用できる範囲から除かれる。ここにいう署名入りとは、必ずしも氏名を明示したものにとどまらない。姓のみ表記した記事(例えば○○ニューヨーク特派員、本紙○○記者など)についてもこれを署名入りとみなす。また、”署名入りの時事に関する評論、解説”のなかには、社外の評論家の記事はもちろん、海外特派員、国内特派記者、論説委員、解説委員、編集委員等の評論、解説も含まれる。
3.社内、社外の筆者を問わず、署名の有無を問わず、「コラム」は同条項の利用の範囲から除かれる。”
出典:第351回編集委員会「新聞著作権に関する日本新聞協会編集委員会の見解」1978(昭和53)年5月11日(最終閲覧日:2021年08月04日)
3-4.政治上の演説
無断転載可能な別のケースは「政治上の演説や裁判手続きの公開陳述などを使用する場合」です。
著作権法第40条の規定を見てみましょう。
“(政治上の演説等の利用)
公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。
3 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。”
4.記事に無断転載するとどうなる?
“著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)(以下略)”
無断転載が許されていないケースでは、必ず転載の許諾を得ましょう。
なお許諾を得て転載するとしても、出所表示をしなかった者は罰金に処せられる可能性があります。
著作権法第122条には以下の規定があります。
“第四十八条又は第百二条第二項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。”
先述のとおり、第48条は出典の明示に関して規定しています。
この規定に違反すると50万円以下の罰金が発生する恐れがあるため、要注意です。
4-1.無断転載の事例1:Twitterのイラストを転載した事件
無断転載に関する事例を2つご紹介します。
1つ目は「Twitter」に関連した事例です。
この事例では、あるイラストレーターの女性がTwitter上に公開したイラストが、14のまとめサイトに無断で転載されました。
このうち4つのサイトとは示談できなかったため、損害賠償訴訟を起こされます。
訴えに対して東京地裁は著作権侵害を認めた上で、賠償命令を出しました。
4-2.無断転載の事例2:「gooヘルスケア」の文章を掲載した事件
2つ目は「gooヘルスケア」に関連した事例です。
事例では、あるブロガーが「gooヘルスケア」に掲載された「法研」の記事を無断転載したゆえに逮捕されています。
このブロガーは自身のサイトに著作物を掲載し、さらに不特定多数のネットユーザーに送信できる状態にしました。
5.まとめ
他人の著作物を転載することは認められています。
しかしすべての著作物を自由に転載することはできません。
一部の例外を除き、原則的に著作者や著作権者の許諾が必要です。
関連記事
-
2024.01.18
SEO対策の見出しタグとは【書き方や作成に役立つツールも紹介】
コンテンツを作成する際、見出しは適切に設置できているでしょうか? SEO対策において見出しはたいへん重要です。 見出しを付けることで、検索エンジンとユーザーに本文の内容を正しく伝えることができます。 九段さん 見出しってどうやって付ければいいのでしょうか? 記事Pro スタッフ 見出しは「見出しタグ」というタグを用いて付けます。付け方にはルールがあるため、ルール通りに付けることが重要です。 この記 …
- 記事の書き方
-
2023.09.01
【プロ直伝】記事作成おすすめツール19選!ジャンル別に紹介
九段さん 最近ブログを始めたんですが、記事の執筆って思ったより難しいですね。キーワード選びや言葉選びがなかなか大変です・・・。 記事Pro スタッフ 同じような悩みを抱えている方は多いようです。そんな時は「記事作成ツール」を利用してみてはいかがでしょうか?記事作成ツールは執筆をさまざまなアングルからサポートしてくれるツールです。種類が多く、九段さんもきっと気に入ると思いますよ。 九段さん 具体的に …
- 記事の書き方