記事への転載は要注意!著作権侵害で罰金1,000万円!?

  • 公開日:2021.09.13
  • 更新日:2024.05.27
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記事を執筆するときに、書籍やWebサイト・論文など、他人の著作物を利用したいと思うことがあります。

他人の著作物を利用する行為は「転載」や「引用」などと呼ばれます。

九段さん
転載と引用って意味が違うんですか?
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記事Pro
スタッフ
似ていますがニュアンスは違います。おおまかにいえば転載とは「引用よりも他人の著作物を多く使う行為」といったところです。その分、自身の記事に転載したい場合はより注意が必要です。

この記事では著作権法をベースに、転載の概要と注意点について解説します。

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記事Pro
スタッフ
下手に転載すると著作権法に触れてしまい、最大1,000万円の罰金など思わぬトラブルに巻き込まれる恐れがあります。ライターや編集作業を行う方はぜひ参考にしてください。

1.転載とは

1.転載とは

転載」とは「他人の著作物(画像や文章・音楽・動画など)を複製し、本来の公開場所(著作者が最初に公開したサイトや書籍や論文など)とは別の場所に公開する行為」です。

具体例で見てみましょう。

具体例1
あるウェブサイトで誰かが書いた面白い記事を発見しました。
そこで「この記事は面白いから自分のサイトにそのまま貼り付けよう」と考え、自身のサイトにコピペして掲載します。
できあがったコンテンツに自分の意見や感想などは特に書きません。
具体例2
ある人のブログでたくさんのキレイな花の写真を見つけました。
そこで気に入った写真をコピペして自分のブログに貼り付けます。
そのブログ記事には写真のみ掲載し、特に自身のコメントは書きません。

このように他人の著作物のみを使って1つのコンテンツを作る行為が転載です。

九段さん
じゃあ他人の著作物に自分のコメントを付け加えた場合はどうなりますか?具体例1で「この記事の内容は本当に素晴らしいです」と書いたり、具体例2で「キレイな写真で癒されました」と書いたりする場合です。
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記事Pro
スタッフ
それも転載とみなされます。少しばかりコメントを入れても、コンテンツのメインが他人の著作物であれば転載です。

なお転載の類似語に「引用」があります。

引用も他人の著作物をそのまま使用する行為です。
しかし引用は、転載のように他人の著作物をメイン要素としては使いません。
あくまでサブ的な要素で使用し、メインとなるのは自身の著作物です。

例えば、健康食品に関する記事を書いているとします。

自身の説明を裏付けるために、ある企業が出している食品のデータを掲載することにしました。
しかしそのデータは自分の文章と比べてわずかな量しかなく、その記事でメインになっているのは自分自身の文章です。

このケースは転載ではなく引用です。

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記事Pro
スタッフ
まとめると「他人の著作物がメインなら転載」「自身の著作物がメインなら引用」ということです。メインかどうかを判断する上で明確な文字数の比率が定められているわけではありません。しかし質と量において明らかに他人の著作物がメインと思われるなら、それは転載とみなせます。転載と引用の違いを理解しておくのは大切です。
原則的に、引用の場合は無許諾で他人の著作物を使用できますが、転載は著作者の許諾が必要だからです。
九段さん
許諾を取るとなると面倒そうですね・・・。
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記事Pro
スタッフ
そうですね、でも許諾を得ないと思わぬトラブルに発展しかねません。著作権が関係するからです。続く部分で著作権について解説しますね。

2.記事に転載するときは著作権に要注意!

他人の著作物を転載すること自体は可能です。

しかし好き勝手に転載するのはNGです。
必ず著作権についての情報を確認し、ルールに沿って転載しなければなりません。

2-1.著作権とは?

2-1.著作権とは?

著作権」とは「著作物に関連して著作者に認められた権利」です。

文章であれイラストであれ、著作物をどう扱うかに関しての権利は基本的に著作者にあります。

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記事Pro
スタッフ
九段さんが家を建てたとしましょう。その家に誰が住むかを決められるのは誰でしょうか?
九段さん
もちろん私ですよね。
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記事Pro
スタッフ
そのとおり、建て主は九段さんだからです。同じように著作物に関する権利は、それを作った著作者が持ちます。ちなみに著作権は以下の2種類に大別されます。
著作者人格権
著作者の名誉を守るための仕組み:著作物を公表するかどうかを決める権利や、著作者名を実名と別名のどちらで公表するか決める権利、著作物を勝手に改変されない権利など
著作財産権
著作者の財産的利益を守るための仕組み:著作物を複製する権利や、上映・上演・演奏する権利、翻訳・翻案・編曲する権利など

それぞれにさまざまな権利が関係していて、著作権法では細かなルールが定められています。

なお著作人格権は第三者に譲渡されませんが、著作財産権は譲渡可能です。
例えばあるエッセイをドラマ化したい場合、著作者はドラマ制作会社に権利の一部を譲渡できます。
権利を譲渡された側は著作権者として、著作物に関する一定の権利を行使可能です。

著作権は著作物が作られたタイミングで発生し、有効期限は原則的に著作者の生存年間および死後70年間です。

2-2.記事に転載するときは必ず著作者の許諾を得よう

2-2.記事に転載するときは必ず著作者の許諾を得よう

九段さん
著作物に著作権が発生するのはわかりましたが、もう少し具体的に教えてください。無断で記事に転載すると、著作権法のどこにひっかかるんですか?
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記事Pro
スタッフ
著作権法第21条に規定された「複製権」です。条文にはこう書かれています。

“(複製権)著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。”

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記事Pro
スタッフ
先述のとおり、転載は著作物の「複製」にあたります。しかし複製に関する権利を専有しているのは著作者であるため、勝手に転載できないんです。
九段さん
なるほど。でも許諾を受ければ転載可能になるんですよね?
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記事Pro
スタッフ
はい。著作権法第63条には以下のように規定されています。

“(著作物の利用の許諾)著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。(以下略)”

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記事Pro
スタッフ
複製権を有する著作者は他人に転載(複製)を許諾できます。そのため、許諾さえもらえれば転載しても問題ありません。
九段さん
ちなみにどんな著作物を転載する場合も許諾を得なければいけないんですか?
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記事Pro
スタッフ
いいえ、実は例外があります。例外については詳しく後述しますね。

関連記事:「記事の著作権はライターのもの!ただし契約内容の確認は忘れずに

2-3.転載は引用よりも著作権がシビア

2-3.転載は引用よりも著作権がシビア

著作権法は転載のみでなく、引用についても適用されます。
引用は転載よりも他人の著作物を使う割合が少ないとはいえ、他人の著作物を使うことに変わりないからです。

しかし引用は転載よりも気軽に行えます。
著作権法第32条に定められた引用である限り、許諾なしで他人の著作物を使用できるからです。

32条1項には次のように規定されています。

“(引用)公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。”

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記事Pro
スタッフ
無許諾で引用する場合は、引用の必然性や引用部分が明瞭に区分されていることなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。とはいえ条件をクリアすれば比較的自由に著作物を使えます。引用に関して詳しくは、以下の記事をご覧ください。

参照:「記事中での引用の書き方を徹底解説!【URLのみはNG?】

九段さん
つまりルールに沿っていれば引用は許諾なしでOKなのに対し、転載は原則許諾が必要ということでしょうか。転載の方が引用よりも著作権の適用がシビアなんですね。
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記事Pro
スタッフ
はい。だからこそ転載と引用を混同しないことが大事です。「引用だと思ったら実は転載だった」とあれば、著作権に関してトラブルが起きかねません。勘違いは禁物です。

2-4.記事に転載するときは出典を明示する

2-4.記事に転載するときは出典を明示する

著作物を転載したい場合は、著作者や著作権者の許諾を得る必要があります。

しかし許諾を受けても注意すべき点があります。
それは「出典の明示」です。

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記事Pro
スタッフ
出典の明示」とは「使用する著作物の出所を記載すること」です。著作権法第48条には以下のように規定されています。

“(出所の明示)次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。(以下略)”

許諾を得たからといって、出典を明示しなければ法律違反です。

九段さん
具体的にどのような内容を明示しなければなりませんか?
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記事Pro
スタッフ
以下のような情報が必要です。
  • 著者名
  • 題名(書籍や雑誌の場合)
  • サイト名(Webサイトの場合)
  • 雑誌名や書籍名
  • 発行年
  • ページ数
  • サイトリンク
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記事Pro
スタッフ
出所にはWebサイトや書籍・雑誌などさまざまな形態があります。ケース別の出典の書き方については以下の記事を参照してください。

参照:「記事中での引用の書き方を徹底解説!【URLのみはNG?】

出典の書き方は引用でも転載でも共通です。
ただし、引用ではなく転載であることをより明確に示したいなら「許諾を得た上で転載」と書くとよいでしょう。

3.許諾なしで転載できるケース

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スタッフ
先ほど、引用と違い転載は原則許諾が必要と説明しましたが、実は転載にも例外規定があります。転載する著作物と転載方法しだいでは、無許諾で使用できるケースもあるんです。代表的な4つのケースをご紹介します。

3-1.私的に利用する場合

3-1.私的に利用する場合

1つ目のケースは「私的に他人の著作物を利用する場合」です。
プライベートで使うなら、著作者の許諾を得なくても問題ありません。

著作権法第30条には以下の規定があります。

“(私的使用のための複製)著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。(以下略)”

この規定では、個人が他人の著作物を複製することが認められています。

具体例で見てみましょう。

複製OKとなる具体例

  • テレビで放映される映画やドラマをダビング機器で録画して、それを個人や家族で楽しむ
  • 誰かのブログで公開されている文章をワードにコピペして、自分のみで読む
  • 公開されている写真をパソコンに保管してアルバムを作り、個人で楽しむ

このように商業目的ではなく、かつ「家族内その他これに準ずる限られた範囲内」で使用することは、私的使用にあたると判断できます。

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記事Pro
スタッフ
注意点として、私的使用といっても個人で行うことすべてに複製が許されるわけではありません。例えば自分で運営しているブログサイトだからといって、他人の著作物を転載(複製)するのはNGです。不特定多数の人の目に触れることになり、限られた範囲を超えると考えられるからです。
九段さん
では知り合いの中だけで誰かの著作物を使用する場合はどうですか?例えば、町内会とか職場の関係者に雑誌をコピーして配る場合などです。全員知り合いなので「限られた範囲内」に該当する気がするんですが・・
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記事Pro
スタッフ
家族内その他これに準ずる限られた範囲内」という表現からイメージできるのは、近しい間柄です。知り合いといっても、それほど強い関係性がないなら範囲外になる可能性が高いです。それに人数が多いとやはり個人的使用の枠を超えてしまいかねません。
九段さん
なるほど。私的使用とみなされるには、本当に限定的な使い方を意識する必要があるんですね。
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記事Pro
スタッフ
そもそも私的使用で許されているのは複製であり、公開や配布は意図されていません。閲覧者の数に関わらず、SNSやブログにアップするのはルール違反です。
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記事Pro
スタッフ
もう一点。30条には「使用する者が複製することができる」とあります。つまり個人的な利用でも、第三者に依頼して複製を作ることはできません。具体例で見てみましょう。
複製NGとなる具体例
パン屋にアニメキャラの顔をあしらったパンを作るように依頼します。
パン屋はパンを作りますが、実際にそのパンを使うのは依頼者です。
依頼者は自分や家族でパンを食べるつもりですが、この場合は複製者と使用者が異なるためNGです。
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記事Pro
スタッフ
私的使用だからといって何でも許されるわけではありません。この点に注意した上で転載を心がけましょう。

3-2.官公庁の文書

3-2.官公庁の文書

無許諾で転載できる2つ目のケースは「官公庁の文書を使用する場合」です。

著作権法第13条には以下の規定があります。

“(権利の目的とならない著作物)次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一 憲法その他の法令
二 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
四 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの”

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記事Pro
スタッフ
この規定によると、憲法や法令・裁判所の判決・国や地方公共団体が発する告示などには、著作権が発生しません。本記事でも著作権の法令を使用していますが、この種の記事は気にせず利用可能です。
九段さん
13条で触れられていない公文書についてはどうですか?
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記事Pro
スタッフ
条件しだいで自由に転載できます。著作権法第32条2項にはこう規定されているからです。

“国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。”

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記事Pro
スタッフ
このように公的機関が広くその内容を知らせたい文書に関しては、転載禁止の文言がない限り許諾なしで転載できます。
九段さん
具体的にどんな文書が該当しますか?
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記事Pro
スタッフ
各種白書(防災白書や原子力白書・経済財政白書など)や調査統計資料・広報資料などが該当します。注意点として、公文書であっても内部資料は無断転載できません。また「説明の材料」として使わずに、ただ単にまるまる転載するのもNGです。
九段さん
なるほど、私的利用の場合と同じで、細かなポイントには要注意ですね。

なお公文書を転載できる場合も出典の明示は必要です。

3-3.時事問題に関する論説

3-3.時事問題に関する論説

無許諾で転載できる3つ目のケースは「時事問題に関する論説を使用する場合」です。

著作権法第39条には以下の規定があります。

“(時事問題に関する論説の転載等)新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
2 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される論説は、受信装置を用いて公に伝達することができる。”

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記事Pro
スタッフ
このように「学術的な性質」でない新聞や雑誌の論説については、無断転載可能です。本来メディアが作成した論説は著作権保護の対象ですが、言論の自由と公共的利益を重視して転載が認められています。
九段さん
新聞や雑誌にある記事全般が対象ですか?
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記事Pro
スタッフ
いいえ、対象になるものとならないものがあります。条文には「利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りではない」とあり、転載できないケースも想定されます。また「一般社団法人日本新聞協会」の公式サイトには以下の記述があります。

“(略)新聞界としては、同条項の適用範囲を下記のように解釈し、これを今後新聞界の慣行として確立することとしたい。

1.「政治上、経済上、社会上の時事問題に関する論説」とは政治上、経済上、社会上の時事問題に関する社説ならびに社説とみなされる論評記事を指す。

2.署名入りの時事に関する評論、解説記事は利用できる範囲から除かれる。ここにいう署名入りとは、必ずしも氏名を明示したものにとどまらない。姓のみ表記した記事(例えば○○ニューヨーク特派員、本紙○○記者など)についてもこれを署名入りとみなす。また、”署名入りの時事に関する評論、解説”のなかには、社外の評論家の記事はもちろん、海外特派員、国内特派記者、論説委員、解説委員、編集委員等の評論、解説も含まれる。

3.社内、社外の筆者を問わず、署名の有無を問わず、「コラム」は同条項の利用の範囲から除かれる。”

出典:第351回編集委員会「新聞著作権に関する日本新聞協会編集委員会の見解」1978(昭和53)年5月11日(最終閲覧日:2021年08月04日)

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スタッフ
このように新聞業界側によると、社説は転載可能でもコラムや署名入りの評論などについては対象外としています。もし転載可能か迷った場合は、許諾を得る方が無難です。また出典の明示については公文書同様に、出所を記載します。

3-4.政治上の演説

3-4.政治上の演説

無断転載可能な別のケースは「政治上の演説や裁判手続きの公開陳述などを使用する場合」です。

著作権法第40条の規定を見てみましょう。

“(政治上の演説等の利用)
公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。

3 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。”

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スタッフ
「同一の著作者のものを編集して利用する場合」は別として、公開された演説や陳述は自由に転載できます。時事問題の論説と同じように、政治演説や裁判手続きでの陳述は、公の場での批評において利用価値が大きいからです。このケースでも、出典の明示は忘れないようにしましょう。
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スタッフ
無断転載できるとしても、出典の明示をすることで著作者への敬意を示せます。

4.記事に無断転載するとどうなる?

九段さん
例外ケースを除いて、もし無断で他人の著作物を転載したらどうなりますか?
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スタッフ
程度の問題や著作者の姿勢にもよりますが、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。著作権を侵害すると、刑事上・民事上両方でペナルティが発生しかねません。
九段さん
どんなペナルティーですか?
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スタッフ
まず刑事上の罰則ですが、著作権法第119条1項と2項には以下の記述があります。

“著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)(以下略)”

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著作財産権の侵害に関しては「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」ついて触れられています。懲役と罰金両方が課される場合もあります。また法人が関わっている場合、第124条によると「最大3億円の罰金」が発生することもあります。
九段さん
かなり重い罰則ですね。
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著作人格権の侵害に関しては、「5 年以下の懲役か 500 万円以下の罰金」ないしは懲役と罰金の両方が課される場合があります。両方を(第 119 条第 1 項)、刑罰として受ける可能性が出てきます。刑罰内容を見ると、著作権侵害が重罪とみなされているのは一目瞭然です。
九段さん
民事上のペナルティーのほうはどうですか?
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いろいろと関係する法律がありますが、損害請求については著作権法第114条に規定があります。複雑なので詳細は割愛しますが、著作権侵害による不当な損失が生じたら賠償請求されるかもしれません。刑事上であれ民事上であれ、著作権侵害は重大なルール違反です。
無断転載が許されていないケースでは、必ず転載の許諾を得ましょう。

なお許諾を得て転載するとしても、出所表示をしなかった者は罰金に処せられる可能性があります。
著作権法第122条には以下の規定があります。

“第四十八条又は第百二条第二項の規定に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。”

先述のとおり、第48条は出典の明示に関して規定しています。
この規定に違反すると50万円以下の罰金が発生する恐れがあるため、要注意です。

九段さん
自分勝手に他人の著作物を使ったツケは大きいんですね。
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そのとおりです。でも無断転載がよくないのは、決してペナルティーがあるからだけではありません。こんな場面をイメージしてください。九段さんが交差点に面した空き地を所有しているとします。多くの車がショートカットしようとその空き地を通り抜けます。九段さんはいちいち運転手たちに文句は言いませんが、どんな気持ちになりますか?
九段さん
私有地ですから当然不快な気持ちになります。
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スタッフ
同じように著作権で保護された著作物を無断転載されたら、著作者や著作権者は気分を害します。自分がしてほしくないことは、社会の常識としてほかの人にしてはいけません。無断転載して申し立てされなかったとしても、マナー違反であることに変わりありません。

4-1.無断転載の事例1:Twitterのイラストを転載した事件

4-1.無断転載の事例1:Twitterのイラストを転載した事件

無断転載に関する事例を2つご紹介します。
1つ目は「Twitter」に関連した事例です。

この事例では、あるイラストレーターの女性がTwitter上に公開したイラストが、14のまとめサイトに無断で転載されました。
このうち4つのサイトとは示談できなかったため、損害賠償訴訟を起こされます。
訴えに対して東京地裁は著作権侵害を認めた上で、賠償命令を出しました。

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イラストは無料公開されていました。そのためまとめサイト側は「転載による損害は発生しない」と主張しています。しかし裁判所は「無料公開でも無断利用は許諾しているとはいえない」と判断しています。
九段さん
著作物の無料・有料は関係ないんですね。でもTwitterの投稿が使われているサイトは山ほどありますよね?あれって全部許諾申請しているんでしょうか?
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Twitterの公式な機能に「埋め込み」がありますが、この機能を使っての転載は許諾なしでOKです。利用規約で認められていて、投稿者もその旨を承知しているからです。
九段さん
では何故まとめサイトでの利用がNGになったんですか?
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埋め込み機能を利用していなかったからです。別の手段で転載したので問題になりました。SNSの投稿を転載する場合は、利用規約も確認する必要があります。

4-2.無断転載の事例2:「gooヘルスケア」の文章を掲載した事件

4-2.無断転載の事例2:「gooヘルスケア」の文章を掲載した事件

2つ目は「gooヘルスケア」に関連した事例です。

事例では、あるブロガーが「gooヘルスケア」に掲載された「法研」の記事を無断転載したゆえに逮捕されています。
このブロガーは自身のサイトに著作物を掲載し、さらに不特定多数のネットユーザーに送信できる状態にしました。

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スタッフ
逮捕されたブロガーは健康食品の売上向上のために、意図的に他人の記事を転載しました。しかも163回にわたって行為を繰り返しています。法研サイドは記事の削除要請をしていましたが、ブロガーは回答せずに転載を続けていました。
九段さん
かなり悪質ですね。
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スタッフ
著作権侵害は犯罪です。絶対に避けましょう。

5.まとめ

他人の著作物を転載することは認められています。

しかしすべての著作物を自由に転載することはできません。
一部の例外を除き、原則的に著作者や著作権者の許諾が必要です。

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引用は著作権法で正式に認められていて、許諾なしでも可能です。しかし転載と引用を混同しないように注意しましょう。意図的であれ無意識であれ、無断転載すると「犯罪者」として処罰を受けかねません。
九段さん
懲役刑や多額の罰金について考えると恐ろしいですね。
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著作者に敬意を払い、転載の必要がある場合は迷わず著作者や著作権者に使用許可を求めてください。インターネット上で公開されている著作物は印刷された出版物よりも簡単に転載ができる分、より注意が必要です。他人の著作権を意識して、誰も傷つかないライティングを目指しましょう。

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